
前回の記事では退職期間について書きましたので、今回はそれ以外の退職時に知っておきたいことを書いていこうと思います。
例えば
「退職理由はどうしよう?」
「もし聞かれたら正直に答えなければいけないの?」とか、
「退職の申し出方法はメールじゃだめなの?」などいろいろ考えますよね。
そんなありがちな疑問を助けになれば幸いです。
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★目次(もくじ)
退職理由の申告は不要。伝える義務もない。
さて、まずは退職する際に、必ずと言っていいほど聞かれる退職の理由についてです。
中には、退職時の調査書みたいなものを用意してきて、いろいろなことを聞かれたり書かされたりする会社もありますよね。
しかし法的な観点からの結論としては、退職の際、
退職理由を書く義務も、正しく、具体的に伝える義務もありません!
ですので、退職の理由も説明も全く必要がないよ、ということになっています。
これは退職の理由に関する定めが、法律にも判例でも存在していないことからも明らかであり、テキトウなことを伝えたとしても、法的に何か問題になるようなこともありません(違法な内容等はもちろんだめですが)。
ですのでもし会社に理由を聞かれたとしても
「辞めたかったので」とか「来たくないんで」
などと回答をしても特に問題はないこととなりますが、社会人としてはおすすめできないかなという点で「一身上の都合」ぐらいで良いのではないかと思いますね。
そして、答えたくないのにそれ以上聞かれたら、「(理由の説明義務はないはずですから)特にありません」で問題ありません。
ということで、法的には退職の際に理由や説明は不要ですし、会社側に伝える義務もないということになります。
退職の申し出の方法
そして、何と言っても退職を伝えるときが一番嫌な瞬間ではないでしょうか。
直接言うのか、電話か、メールではいけないのかなどいろいろ考えると思います。
しかしこちらも同様、
退職の意思を申し出る際の手段は特に決められていません!
ですから、相手に伝わる手段であれば何でも良いということになります。
ただ、退職の際には圧力をかけてきたり、不満をぶつけてくる会社もあるでしょうから、退職する会社の傾向によって、方法を選択することが良いのではないかと考えます。
よく使われる具体例と簡単にリスクを書いてみますね。
直接会って、直接伝える
伝達方法としてはこれが一番確実ですよね。
これができるということは直接会って伝えられる関係があるということですし、一番問題のない方法といえると思います。
1つ注意する点としては、書面を用意しておき、渡したほうが確実です。
書面内容は最低限伝えなければいけない内容、
・当日の日付
・名前
・何年何月何日に退職するという意思
を表示されたもので十分ですので準備しておきましょう。
<参考>
★【退職】人事・法務経験者が解説する「退職届(願)」の書き方【サンプル】★

しかし、簡単にこれが選択できれば悩むことはないですよね。
直接あって直接伝えることを避けたい場合、次に考えられるのは電話でしょうか。
電話で直接伝える
これも確実に相手に伝わりますし、リスクといえば、そんな電話知らないとか、聞いてないと言われた場合ぐらいでしょうか。
しかし、あまりおすすめはしません。
電話だと後日直接話をしようとか、会って話をしようなどと言われ、結局二度手間になる可能性があったり、書面などの証拠に残るものもないので、相手の勘違いなどで、言った言わない紛争になるようなこともあり得ます。
ですので、少しリスクが有ると思います。
メールやLineなどのメッセンジャーで直接伝える
これは会社側から指定されていない限り止めたほうが良いです。
メール等で退職を伝えても、無視されたり、放置されたら、伝わっていないことになりかねないですし、そもそも届いてないと言われてしまったら、こちらではその証明が難しく相手に退職の意志が伝わったていたという証明ができません。
また若くない方は、往々にしてこのような伝達手段を、根拠もなく『失礼』と思う人もいますので、おすすめできないと言いますかやめておきましょう。
書面を郵送して伝える
この方法は悪くないです。
何らかの理由で、会ったり、電話して直接伝えるのが難しい場合や、避けたい場合に使える方法です。郵送すれば書面で残るのでリスクも少ないですからね。
ただし、郵送方法は気をつけたほうが良いです。
例えば、事前に退職の意志を伝えており、形式として書面で送るような場合は、レターパックや特定記録や書留で良いと思います。
しかし!! いきなり退職届で郵送で送るようなときなどは、必ず『配達証明付き 内容証明郵便』にしておきましょう。
ちなみに『内容証明郵便』とは、必要な時に郵便局が第三者として書面の内容を証明してくれるものですから、内容について紛争の余地がなくなり安心です。
あとは、届くまで(相手が受け取るまで)の時間を計算しておく必要がありますね。
使える場面は限られるかもしれませんが、内容と方法さえ間違わなければこの方法も悪くないです。
親に伝えてもらう
もし未成年の人でしたら、自分で伝えたくない場合の選択肢はこれが一番良いと思います。労働基準法58条2項により、本人に代わり契約解除を行うことができます。
また、成年者でも親に伝えてもらうのは有りだと思います。親がその人の代理となって、退職したいと伝えるわけですから、どう思われるかなどは置いておいて、特に問題はないことと思いますね。
まとめですが、法的には意思を伝える方法は決められておらず、自分の負担とリスクを考えた手段を選択するのが良いです。
その他、退職の際に気をつけたいこと
基本は合意退職を目指す
退職するときは、特に理由がなければ、当然就業規則などの定めのとおりに進めることが一番良いです。
就業規則の規定通りに対応すれば何の問題も残らず、あなたと会社がお互い合意の上、退職が成立しますからね。
『懲戒』の対象となる行為に気をつける
例えば、退職を申し出してからの残りの日数で有給を使ったり、やむを得ない理由で欠勤し続けるということは十分考えられると思います。
これは会社側が承知していれば特に問題となることではありません。
しかし、『もうやめる会社だから』とか、『もう行きたくない』からと、このようなときに仮病で欠勤し続けたり、無断欠勤などはしないように気をつけたほうが良いです。
退職するまではその会社の従業員ということには変わりがないので、このような行為は懲戒の対象となる可能性が十分あります。
例えば、就業規則の「懲戒」の項目に
欠勤が3日以上続いたら会社は診断書の提出を求めることができるとか、
無断欠勤が連続○日日以上続いたら懲戒解雇にする、
などと書かれていると思います。
気を抜くことなく、懲戒の対象となる行為には十分注意しておきましょう。
何かを言われたり、脅されても従う理由はありません!
さて最後は、退職の際に何かを言われたり、まるで脅しのようなことを言ってくる会社について少し書きたいと思います。
よく聞くことですが、
退職の申し出の際に、「損害賠償を請求する」とか「給料は払わない」などと
まるで脅しのようなことを言ってくる会社は今でもあるようですね。
しかし、こんなことは相手にしなくて大丈夫です!
そもそも退職にする人に対して、基本的には何かの不履行(行わなかったという意味)による損害賠償を請求するという契約をさせることはできません(労働基準法16条)し、
いろいろ難癖をつけ「損害賠償請求する」などと言われたとしても、実際には特別な事情などによって会社に実損が発生していない限り、労働者に対する損害賠償請求が認められるケースは多くありません。
ですので、何も思い当たる節(引き継ぎをしなければできない仕事なのに、引き継ぎの要請を無視して退職したなど)がなければ、何を言われてもスルーしておけば大丈夫ですし、過剰なようなら、強要などで警察に相談するとか、労働局に相談するなどと通達して無視で良いです。
また、「給料を払わない」というような事を言うのは言語道断です。
会社は、従業員が実際に労働した分の賃金は理由を問わず支払わなければなりません。そしてこれには辞める理由や辞め方なども関係しません。ですので、実際に労働した分の賃金は支払う義務があります。
退職と一言で言っても、一人一人にさまざまな事情があると思います。
この記事を見てリスクなどを知り、ご自身が納得の行くように進んでいただければ幸いですね。