依頼したその日から心身ともに解放され、気持ちが一新できる「退職代行」サービスは人気です。
料金も数万円で済みますし、ありがたいですよね。
そして、この「退職代行」ですが、業者のHPを見ると、どこでも同じように「即日退社可能」とか「損害賠償請求されません」など、メリットを強調して書かれているのを見かけます。
しかし正確に言えば、退職代行を利用したからと言って、「即日退社可能」とか「損害賠償請求がされない」というが保証されるわけではないのですが、その話はここでは置いておき、
今回はあまり触れられていない、この「退職代行」業者の利用に際し、実際どのようなリスクがあるのかという点について書いてみたいと思います。
なお、ここでいう「退職代行」業者とは、弁護士ではない者が行う「退職代行」を想定しています。
また、「退職代行」のメリットデメリットなどについては、こちらで書いています。
★~失敗しない「退職代行」依頼!【メリット・デメリット】~★
★目次(もくじ)
「退職代行」業者ができること
先に、「退職代行」業者ができることを確認しておきましょう。
・双方の意思を伝達する(使者)
・対応に関する助言
・依頼者に代わり会社と直接やり取りをする
このように、主に依頼者と会社の間に入って、依頼者の意思を会社に、会社の意思を依頼者にと、双方の意思を伝達してくれますが、基本的にはこの伝達するという役目のみとなっています。
「退職代行」業者を利用する際の本当のリスク
それでは、「退職代行」業者を利用する際に考えられる具体的なリスクを見ていきましょう。
具体的に要注意であるリスクとしては以下があると思います。
スムーズな退職の失敗
何といっても「退職代行」のリスクと言えばまずこれだと思います。
どの「退職代行」業者もHPなどでは、メリットのみを強調していますが、実は「退職代行」を利用したことにより揉めてしまうというケースはまったくないとは言えないと思います。
弁護士でもない「退職代行」業者は、あくまで本人の退職意思を会社に伝えるだけですので、会社側の反応次第という運頼み的な要素にはリスクがありますね。
解雇、懲戒解雇
実は、今回一番お伝えしておきたかったものが、この解雇があり得るということです。
ある日突然「ここの従業員の〇〇さんが即退職をしたいと言っているのでその連絡をした」と「退職代行」業者から会社に連絡があるわけですが、
会社からすると全く面識のない第三者であり、代理人でもない「退職代行」業者からの話を聞いたり、応対する義務はありません。
実際は、一応話ぐらいは聞いてくれるでしょうが、その「退職代行」業者からの連絡を、本人からの正式な連絡と認めるかどうかも会社の判断次第というところがあります。
そして万が一、会社が本人からの正式な連絡ではないと判断した場合、その「退職代行」業者の話を聞かないということや、連絡を受けていないと考えることもあり得ない話ではありません。
これは、「退職代行」業者のところを、「依頼者の友人」に入れ替えて考えるとてもわかりやすいと思います。
一方、依頼者は業者に依頼して以降は出勤もしていないでしょうし、会社とも連絡を取っていないと考えられます(業者から会社からの連絡は無視してOKと言われるケースもあるようです)。
「退職代行」業者は会社の対応内容を依頼者に適時伝えるとは思いますが、その間にも、会社からすると、本人(依頼者)は会社に出勤しないし、会社からの連絡にも出ない状態が続くことになり、このような行為は無断欠勤や故意に業務放棄していると判断される危険性があります。
となれば、これらの行為は当然懲戒処分の対象でしょうから、現実には所定の数日間を無断欠勤した後に、最悪「懲戒解雇」扱いとされてしまうことも考えられるわけです。
可能性はとても低いとは思いますが、本人の知らないうちに、実は「懲戒解雇」されていたなんて全然笑えませんから、一応は注意が必要だと思います。
退職代行の拒否
これもあらかじめ知っておきたいことです。
上記で見たように「退職代行」業者は、代理人ではなくただの伝達者です。
「〇〇さん(依頼人)がこのまま会社辞めるって言ってますから退職にしてください」
と会社に伝えるだけなので、もし会社側に反論や条件提示などがあって本人と話し合いをしたいと思ったときには、「退職代行」業者は交渉ができませんから応対できません。
ですので、そのような代理人でもなく、交渉もできない「退職代行」業者に対し、
『うちは本人か法的に権限の認められている人(代理人)としか話し合いはしません』
などと、そもそも会社側が拒否することは十分考えられます。
会社から、話をする理由がないと拒否されてしまうと、「退職代行」業者としては何もできなくなってしまう点にも注意しておきましょう。
退職の中には解雇も含まれる
次に『退職』について少し見ておきましょう。
退職とは、労働契約の終了ですから、どのような形であれ、その労働契約を終了させれば退職と言えます。
そして契約終了の場合、解約と解除がありますが、これを労働契約にあてはめてみると、
解約=合意退職などや条件成就などの双方合意による退職
解除=いずれかからの一方的な退職
ということになります。
ですから、一言で『退職』といっても、その内容には合意退職だけでなく、解雇の場合も含まれていることになります。
そして上記で「退職代行」業者の利用リスクとして『解雇」の可能性があることは確認しましたが、
例えば、「退職代行」業者を利用した際に、「退職は完了しました」と報告があっても、実は合意解約ではなく、解雇であったということもあり得るわけです。
「退職代行」業者としては、合意退職でも懲戒解雇でも「退職完了」と言えるので、依頼する方としては、このような言葉のマジックで誤認識しないように注意しておく必要はあります。
便利で頼りになる「退職代行」ですが、その利用の際にはこのような注意点もあることを認識しておきましょう。
それでは~。