
私はある企業で法務の経験がありまして、普段そこでは業務以外のことも聞かれることが良くありました。
例えば、友人が夫にDVを受けているという「DVやストーカーに対する対応方法」であったり「電車で痴漢に間違われたときの対応」であったり。
どれも第三者が違法行為や不法行為かどうかは判断するものではないで、多くは何とも一言では説明が難しいものばかりでしたね。
そして今日通勤で駅まで歩いていたら、前方で警察官の職務質問を受けている男性がいまして、ふと、そういえば職務質問への対応方法についてもよく聞かれたなぁ、、と思い出したので、今回は、「職務質問」に対する(私が考える)ベストな応対方法を書いてみたいと思います。
★目次(もくじ)
「職務質問」とは
「職務質問」について書こうと考えたときに、最初に浮かんだものはサンドウィッチマンの「職務質問」というコントでした。
「それが腹の減っている奴の体形か!」と伊達さんに突っ込む富澤さん。おもしろすぎます!
さて「職務質問」でした。大変失礼しました。警察が「職務質問」をできる根拠は、警察官職務執行法2条1項規定によります。
警察官職務執行法 第2条第1項
警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。
難しいのは他にお任せするとして、簡単に言ってしまうと
①何らかの罪を犯そうとしている人
②既に行われた犯罪があると知っている(知っていそうな人を含む)人
に対して、例の「ちょっといいですか~」と聞くことが認められているわけですね。
ですので「職務質問」を受けたことがある人は、
犯罪をしようとしているか、したように見えるまたは何かを知っていそう、隠していそうと思われて質問された
といえるのかもしれません(笑)。
まぁ怪しい何かか、違和感のみたいものがないとされないですからね。まったくもって、気分の良くない定義であり行為ではありますよ。
ただ、もう少しよく見てみると条文の最後が、『~することができる』となっています。ですのでこれには強制力はなく、あくまで任意でということが前提にはなっています。
実際の運用としては、
あくまでも任意の範囲で、何となく怪しいとか、気になった程度で「職務質問」が行われている。
というところが現実的なところで、規定の上ではこれに応じるのは義務でないこととなっています。
しかし現実的に理由もない拒否は難しい
例えば職務質問された際にもし拒否したらどうなるでしょうか。
あくまで法的には強制力はないということになっているので、拒否すること自体は違法ではないはずです。
しかし現実では、拒否した瞬間に、さらにしつこく質問をされたり増援が来たりする可能性が高いものです。
警察の方では、拒否する=何か隠している と一方的に考えさらに追及してくる構えとなりますから、あくまで任意とはされているものの、実態としては
拒否したとしても「わかりました」と言って見逃してくれない。
ということが多々行われています。
「職務質問」内容の適法、違法の具体例
拒否自体できると解釈できるものの、実際拒否すれば余計に怪しまれて深みにはまってしまうので拒否は現実的でないというのであれば、具体的に職務質問の際に、警察の行為のどこまでが適法で、どこからが違法かというところは気になりますよね。
一概に言うことは難しいものですが具体的な過去の判例を見てみましょう。
合法の範囲とされた行為
・道をふさぐ
・相手の手や肩をつかむ
・自転車の荷台をおさえる
・ハンドルを握る又はエンジンを切る
などがあり、
違法とされた行為(やりすぎ)
・強引に掴んでパトカーに乗車させる
・転倒させ数人がかりで押さえつけ手錠をかける
・体に触れて止まらせる
・「止まらなければ逮捕する」などの発言
などがあります。
これはあくまで実際のその場で起きたことに対し、ケースバイケースでの判断なので一概にこの行為自体がそれにあてはまるものということではありません。
例えば、「職務質問」におとなしく応じているのに、圧力をかけて自転車や肩をつかんで圧迫したりすることは、やりすぎとなり、違法と判断されるケースは高いと考えられます。
判断的には常識的に考え、その場面で必要な行為の範囲と認められれば適法で、必要以上の行き過ぎた行為は違法となるということになっていますね。
となると、職務質問は任意と言いつつも、ある程度の強制力の行使(実力行使)は認められていて、実際は逃げることは難しいものと考えるしかなさそうです。
やっぱりベストな方法はこれ! 遅刻しそうなときなどは説明を!
任意とされながら実はある程度の強制力が許されている職務質問。
非協力的な人の周りを数人で取り囲んで圧力をかけたり、拒否しようとした人の自転車を手で持って押さえたりなどの行為は適法であり許されるものでした。
このように「職務質問」は拒否しようとすればするほど、逆に適法の範囲で使用できる強制力(抑えたり、引き止めたり、肩を掴んだり)が広がっていきます。
ですので、職務質問された場合の最善の方法はやっぱり、すぐに
素直に応じる
ことしか考えられないところです。
ただやみくもに従うのは理不尽ですので、遅刻しそうだったりして急いでいるときは、きちんと理由を言えば、総合的に判断して「職務質問」が行われないこともしばしばあります。
ですので、拒否したい場合には明確に理由を伝えることが有効です。
日常的な警察の仕事は犯罪の捜査ばかりが目立ちますが、このような「職務質問」で犯罪を早期に発見したり、未然に防ぐという優れたメリットもあり、
実際に未然に防がれている犯罪は事件となりませんし、ニュースにもなりませんが山のようにあるのもまた事実です。
一市民としては治安維持協力のため仕方がないのかなと思いますね。
あ、あとくれぐれも鍵が壊れていたり、鍵がついていない自転車に乗って、警察官の前を通るのはやめましょう。ほぼ「職務質問」されると思います。
職質される人は毎回されることが多いですし、されない人は全くされません。普段から職質されないような振る舞いをとるのも未然に防ぐ点でお互いが助かると思いますので、意識すると良いと思いますね。
それでは今回はこの辺で~。