
とある芸人の所得隠しの問題が発覚し、メディアの格好の標的にされ活動自粛に追い込まれました。
TVのコメンテータの中には、本人だけでなく、見過ごしていた税理士についても問題があると指摘しているケースも見かけましたが、私はこれには全く賛同できません。
ということで今回は、脱税や違法行為などの問題が起きたときに関わっていたり、見過ごしていた専門家(税理士・弁護士・社労士等)への問題指摘が全く当てはまらない理由を書いてみたいと思います。
★目次(もくじ)
このような専門家には強制権はない
まず、専門家への問題指摘が全く当てはまらない一番の理由としては、このような専門家には強制的な権力がないことが挙げられます。
例えば、警察には捜査権、市町村には住民税を強制的に徴収する権力、裁判所には判決に従わせる強制力などの、いわゆる相手に強制的に従わせる権力が与えられています。
しかし一方、税理士、弁護士や社労士などには、その分野のスペシャリストではありますが、いわゆる強制的に従わる義務はありませんし、強制的に従わせる権力も与えられていません。
ですので、今回のように申告漏れとか脱税した人に関わっていた税理士が申告漏れを指摘したり、注意したりしただけであっても、実はそれが精一杯の職務の全うであり、
強制的に行わせる義務もなければ、従わせる権力もありませんので、このような専門家に対して、見過ごしていたのは問題だという指摘は全くあたらないということになります。
専門家の指摘に従う人は、やはり一番多い
私は法務の経験があり、ベンチャー企業に携わったことも幾度かあり、実際にこのような専門家の指摘に対して、指摘された人がどのような対応をするかという現場をたくさん見てきました。
そして、このような専門家への指摘に対する対応として一番多いのは、やはりその指摘に従うというものです。
これは当然といえば当然で、知識のあるスペシャリストの判断を仰ぐために相談等の依頼をしているわけですから、いわば意見をもらったらそれに従うのは自然の成り行きですよね。
専門家の指摘に従わない人も意外に多い
しかし、知識のあるスペシャリストに相談しておきながらその指摘等に従わない人が意外に多いことも事実です。
今回の芸人の申告漏れもこのケースですよね。
税理士から何回も申告漏れを指摘されていながら、結局強制的に税金を徴収することができる税務署から指摘があるまで放置していたわけです。
そして、経験上このような指摘に従わないケースは意外に多いことも事実です。
例えば、あるベンチャー企業では、弁護士からそのような取引は違法もしくは脱法行為であり、リスクが大きいと指摘を受けながらも、当該取引を強行して、結局株主から経営上のリスクが大きすぎると判断され当該企業が廃止されたこともありました。
また、あるベンチャー企業では社労士からその年俸では最低賃金を下回っていると指摘されながらも従わずに、結局株主から経営者の資質を問われ社長を解任されたケースなども見てきました。
このように、リスクマネジメントのために専門家に相談等をしているのに、相談目的を無視し強行したあげく、至極まっとうな判断を備えている人や会社に飛ばされたり解散させられたりすることが少なくないことも事実です。
結局、強制的な徴収権や権力等がある相手には仕方なく従うが、そのような権力がないものに対しては自分を押し通すという、
いわばその根幹には、人としてどうかというか、本来の人間性の部分の問題が現れているものでもあると考えられるものでもあると思いますね。