
今年に入ってから、Twitterで写真を無断使用していた人に対し訴訟が起こされ、裁判所が発信者情報の開示を認めたものが2件ありました。
そして、何も知らずにその無断使用者の投稿を「リツイート」した人の発信者情報の開示も認められました。
この「リツイート」した人のアカウントの開示情報が認められるということは、「リツイート」した人自身も著作権侵害にあたるという判断に基づいてのものです。
そして、これらの情報開示が行われると、アカウントに紐づく個人に関する情報が開示されるので、次は当該個人に対し著作権侵害に対する追求がなされ、損害賠償請求が行われていくものと考えられます。
今回のこの判断で、Twitterで何も知らずにただ「リツイート」しただけで、著作権侵害になると判断されることが明らかになりましたので、
どのような場合に「リツイート」しただけで著作権侵害となってしまうのかという点について今回は書いてみようと思います。
★目次(もくじ)
「発信者情報開示」請求とは
まず「発信者情報開示」請求について見ておきましょう。
これはプロバイダやウェブサイト運営者などに対して、このアカウントに関する情報を開示しろ!と請求することです。
外からでは、特定のアカウントの持ち主に関する情報はわかりませんから、登録情報を持っているプロバイダ等にこのような請求をするわけですね。
なぜ、このように裁判所に訴えるのかという点ですが、プロバイダなどは法令に従って通信の秘密を守る義務があったり、個人情報の保護が課されています。
またこれらに併せて表現の自由などを守るという観点から、私的に発信者情報開示請求をしてもまず応じることがありませんので、裁判所に訴え強制力を得るのが通例になっているわけですね。
このように、任意または強制力を持ってアカウント等の情報開示を請求することを「発信者情報開示請求」といいます。
また、実際に訴訟を起こすときに相手方の住所なども必要なので、ここまでくるとそこまで見越しての可能性も高いです。
一言でいえば、かなり本気で損害賠償請求の裁判までやる気ということがわかりますね。

「著作者人格権」とは
毎度おなじみ「著作権」の権利の中には、「著作者人格権」というものがあり、その中には以下のものがあります。
その前に著作権とは? という方は以下を参考にどうぞー。
★~著作権とは?などやさしく解説しています~★

公表権
自分の著作物を公表するかしないか。公表はいつするかなどを決めることができるというものです。
氏名表示権
自分の著作物を公表する際に、著作者の名前を表示するかしないか。またどのような表示にするかを決めることができるというものです。
同一性保持権
自分の著作物の内容を勝手に改変などをさせないというものです。
ともう1つ仲間があって
名誉声望保持権
著作者の名誉を害すると思われる方法で著作物を利用させないというものです。
著作者には、「著作者人格権」によってこれらの権利が認められています。著作者とは、著作物を創作した人(法人)のことですね。
著作者にはこのような権利が認められていて、これらの権利は他人に譲ったりはできませんし、著作者(法人除く)が既にこの世に存在していなくても有効とされています。
これらのいずれかの権利が侵害されれば、「著作者人格権」が侵害されたということになります。
アイコンに他人の写真を無断使用した場合は著作権侵害
例えば、自分のTwitterのアイコンに他人の写真を無断使用していた場合などは、当然著作権侵害にあたる可能性が濃厚です。
そして今回の例では、自分のTwitterのアイコンに他人の写真を無断使用していたら、その写真の著作者から発信者情報開示請求がなされ、認められたというものでした。
もう少し詳しく見ると、ここで争われたのは「著作者人格権」の「同一性保持権」の侵害にあたるかという点で、結果として画像の自動トリミングが「同一性保持権」を侵害していると判断されました。

ツイートなどで写真を無断投稿した場合も著作権侵害
プロフィールやツイートで写真を無断使用したら、それは著作権(公衆送信権)侵害は明らかである。とされたものです。これは当然ですね。
写真を無断使用した投稿を「リツイート」した場合も著作権侵害
これは、プロフィールやツイートで無断使用した写真をUPした人のツイート(画像使用が著作権侵害行為)などをリツイートしたケースとなります。
無断使用している本人は当然著作権侵害であるのは明白ですが、
実は何と、それを「リツイート」しただけの人も著作権侵害にあたるという判断となりました
これは、他人事ではないですよね!!
判例を確認してみると、
画像使用が著作権侵害である記事やプロフィール(タイムライン)などを「リツイート」した人は、その無断使用された著作者の著作者人格権(同一性保持権)を侵害する
という判断がなされています。
ちょっとややこしい感じなので、簡単に言ってみると、
誰かが無断使用した写真をUPしていて、それが無断使用されていると知らずにリツイートしたら、
はい、お前も著作権侵害だから、個人的な情報の開示を認めるけど悪く思うなよ(by 裁判所)。
ということです。
これってやばくないですか?
ていうのが、今回一番言いたいところだったりします。
そして、ここで発信者情報開示請求をしていた人は、その写真の削除要請をTwitterに行い削除されていた後に、さらに損害賠償請求の裁判を起こしたという行動力のある人でした。
これも簡単に説明すると、
知らずに著作権侵害してた奴の投稿を「リツイート」しちゃったけど、指摘があって削除されたようだから許してくださいませ・・・
は!?何言ってんの、削除の次は損害賠償請求するから待ってろ(by 著作者)
って、こんなことにまでなるってことです。
このニュースの記事へのコメントの中には、
「まず警告じゃないの?」とか
「どれぐらい知っていたかも影響するよね」
というものを見ましたが、
全く関係ないです。
著作者(著作権者)がどのような手段を取るのかについては自由なので、いきなり裁判が起こされることも当然ありますし、削除に応じたからといって終わるとも限りません。
あくまで、社会の通例として、まず削除警告があって、応じなければ裁判という流れになることが多いというだけなので。
また、どれぐらい知っていたかなどは今回の判断には影響していません。知らずに「リツイート」しただけで巻き込まれていますからね。
これらから考えられる注意すべきこと
これらの判断を見ると、今後注意していきたいこととして、まずTwitterに限ったことではないというところだと思います。
投稿元の画像使用が著作権侵害行為である場合に、自分がフォローなどすることで、画像が自動で加工され、表示される仕様のものは著作権侵害にあたる可能性が高いということになると思います。
またTwitterでは、今のところの解決策としては、
疑わしい画像やアイコンを使用している人の投稿は「リツイート」しない
事が唯一の回避策になると思います。
ですので、著作権侵害について怪しい人の「リツイート」は控えることをおすすめしておきます。
発信者情報開示請求のその後
万が一でも巻き込まれたくない裁判ですが、やはり発信者情報開示請求が認められた後のことは気になりますよね。
もし巻き込まれてしまったらどうなるのかを一般的な内容を元に書いておきます。
まず発信者情報開示請求が認められると、不法行為をしているアカウントに紐づく情報が開示されます。
・氏名
・住所
・電子メールアドレス
・IPアドレス
・使用端末情報(SIMカード識別番号)
・使用回線、プロバイダー
などの内、すべてまたは一部です。
著作者はこの情報をもとに、削除警告や裁判所に損害賠償請求の訴えを起こしたりしていきます。
先ほども書きましたが、著作者は、単に「削除しろ!」と警告したり、いきなり裁判を起こして損害賠償請求や削除を求めることも自由ですので、実際にはケースに変わります。
このように確実なことは言えませんから、事前に注意することに越したことはないわけですね。
もし仮に裁判を起こされたら逃げられないし、無視したり出席しなければ相手の主張が認められてしまうのでこんな面倒なことはありません。
だからこそ、トラブルに巻き込まれないように注意することが必要になりますよね。
まとめ
今回の件で、
アイコンや投稿記事で、他人の写真を無断使用していた場合、それが加工(自動加工含む)されていれば、それだけで「著作権侵害」と明確に言えるようになりました。
また、他人がそういう行為をしていた場合に、
その著作権侵害している画像を投稿等を「リツイート」すれば、自身も著作権侵害行為をしたものとして判断される可能性が高いことがわかりました。
これは、逆にして考えると、自身がそういう行為をしていた場合に、リツイートしてくれた他人を巻き込む可能性があるということにもなると思います。
どのサービスもそうですが、不法行為や他人の権利を侵害する行為は処分の対象になると思いますので、このような行為によって自身や他人のアカウントが停止や削除されることにも繋がりかねません。
そんなことにならないよう、今回の記事が参考になれば幸いです。
それではー。