日本で副業を禁止している企業は約60%という結果があるそうです。
まだまだ日本の大半の企業で副業が禁止されている事実がありますが、この禁止は本当に適正といえるものなのでしょうか。
そこで今回は、会社の一律副業禁止について、副業で気を付けることなどを解説していきたいと思います。
★目次(もくじ)
副業禁止でも副業は可能なのか?
早速結論になりますが、もし就業規則等で一律に副業が禁止されていた場合、副業をすることは可能か?という疑問に対する回答は、
副業は可能である
ということになります。その理由を次で書いていきます。
会社が副業禁止しても可能な理由
副業を禁止している会社の多くは、就業規則などで一律禁止のような条項として書かれていると思います。
ですので一見すれば会社の副業禁止は守らなければいけないように思えますが、原則としてこの副業の一律禁止は有効とは認められないものと言えます。
これは過去の判例から明らかです。
過去の判例で、
『労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、各企業においてそれを制限することが許されるのは、一定の条件の場合に限られる』
とされており、会社が就業規則などで一律に副業を禁止していたとしても、その条項部分は当然には有効とはならないとしています。
ですので原則としてこのような場合、副業は可能であると考えて問題ないと言えます。
会社が副業を禁止できる条件
本来労働者は、就業時間以外の時間を会社に不当に拘束されず自由に利用することができます。そして原則的として会社がこの自由時間を制限をすることはできません。
ですので自由時間を副業にあてることも本人の自由であり、会社が制限することは不当な行為になります。
とはいえ判例では、一定の条件下の副業について会社が制限することは適当(有効)であるともされていますのでその条件も見ていきましょう。
会社と労働者は、労働契約を締結していますので、労働者は契約に反しない程度以上に労務を提供する義務があります。この労務の提供の水準について、本業の業務遂行に支障があると判断できる場合は、会社はその副業を禁止できます。
秘匿や秘密扱いされているような情報などを、副業で利用したり、漏洩が認められる場合には、会社はその副業を禁止できます。
いわゆる会社の看板に泥を塗る行為と言われるもの全般ですね。副業に関連して会社へのイメージや印象などを貶める行為がある場合に、その副業を禁止できます。
会社の事業と同系、同職種の事業に携わったり、手伝ったりするような行為です。会社の利益に相反しますので競合となるような副業を禁止できます。
現在のところ以上、4つの条件に該当する場合は、会社がその副業や行為を禁止することは適当(有効)とされています。
また、このようなことがあった場合には、懲戒処分の対象にもなると思いますので注意が必要です。
副業が可能な条件
ということで上記で見てきたように会社が副業を禁止できる条件は4つに限られており、上記4つの条件に該当しなければ副業は法律上問題ないということになります。
そして判例では「就業規則で副業(兼業)を全面的に禁止することは、特別な場合を除き、合理性を欠く」とも言っています。
これを具体的に言えば、会社が就業規則等で「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」などと定めていても、
このような一概に兼業を禁止している規定は、合理性を欠くものとして認められない
ということになります。
ということで、
副業は可能(適正)である
と言えることになります。
なお、就業規則は単に会社との契約内容を定めたものにすぎず、どのような定めがあったとしても労働者にとって不利な内容のものは労働基準法や判例が優先されます。
副業禁止の規定が当たり前のようにある理由
副業に関して何かを定めている法令は現状存在しません。ですので副業については会社ごとの取り決めによることになります。
そして、日本のほとんどの企業の就業規則の中に、一応副業禁止の項目があり、おそらく
「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」
などと書かれているだけのものが多いと思います。
この面倒な一文、就業規則の中に当たり前のようになぜ書かれているのでしょうか。
理由の1つであると考えているのは、厚生労働省がテンプレートとして公開しているモデル就業規則の中に、何となく書かれていたことであると考えています。
モデル就業規則とは、厚生労働省が就業規則のお手本テンプレートとして公開しているものですね。
このモデル就業規則は役人が作ったものだと思いますが、実は公務員には、公務員法(法律)で兼業禁止の規定があるので、それに何となく準じて作成した結果ではないかと思っています。
会社でいざ就業規則を作ろうとするときには、労働法の管轄である厚生労働省が公開しているモデル就業規則を参考にしたり、DLして使うことは多いでしょうし、
この中に書かれていることについては、適当な内容だと考えやすいでしょうから、社労士等の専門家も特に違和感を持つことなく、
副業禁止規定が定義されたまま
という方向になったと考えることは、難しいことではないと思います。
なお、モデル就業規則は平成30年1月に改定され、この規定は削除され、代わりに「他の会社等の業務に従事することができる」という反対の意味を持つ規定が追加されています。
労働時間の盲点。アルバイトは残業になる可能性。フリーランスは制限なし。
会社が副業を禁止していても、一定の条件にあてはまる場合以外は、労働者の副業は禁止できないというところは伝わったと思います。
ただし、副業の内容については注意が必要なところがあります。実際の内容によっては法律違反や会社に迷惑をかけてしまうことがあり得ますので、ここではそのあたりを書いていきます。
まず、副業で注意したいのは税金の問題ですよね。収入が年間20万円を超えると個人で確定申告が必要となります。
副業としてアルバイトなど、別事業所などで雇われて働く場合には、労働基準法などの労働法にも注意が必要となります。特に労働時間は問題になりやすいです。
労働基準法では、原則として1日8時間、週40時間という決まりがありますが、実はこの時間数には、労働した時間が通算されます。
ですので、例えば本業で8時間労働した後に、副業のアルバイトで3時間労働した場合の、1日の労働時間は11時間となってしまいます。
そして、会社は労働者の労働時間を把握しておく義務がありますから、この労働時間について、本業と副業の会社ともに、認識していないといけないことになります。
労働時間は自身にとっても会社にとっても盲点になりやすいので、会社に黙って副業としてアルバイトをするときには注意が必要です。
一方で、いわゆるフリーランスは個人事業主と判断できるので、労働基準法の適用はありませんから、労働時間などについても特に制限などはありません。
ただし、だからといって、本業に支障が出るようなことになると会社が副業を禁止できる条件に該当しますので、こちらも注意が必要です。
まとめ
ということでまとめですが、
会社が一概に副業を禁止すること有効とは認められない。ただし、一定の条件に該当する場合に限り禁止することは認められる。
労働者は、就業時間以外の時間を自由に利用する権利があり、副業をすることも問題はない。ただし内容により、法令違反や会社への迷惑行為にあたる場合に注意が必要。
となりますね。
副業を考える際は、まず会社の許可が出そうであれば、許可をもらうことが、全くリスクがないので良いと思います。
そして、許可がされそうにないとか、話をするのが嫌だという場合は、会社に黙って副業することになるでしょうか。
ただし、この場合には、もしものために会社が副業を禁止できる条件に該当しないこと、および違法行為とならないようにする必要があります。
そして、このような判例を理解していないような会社ですと、副業が明らかになったときには、副業禁止規定を理由に懲戒処分などをしてくる可能性もあります。
当然、これらの副業禁止や懲戒処分は裁判所で争えば認められないことが多いと推定できますが、こちらが正しいとはいえ、面倒な紛争に巻き込まれる可能性はありますので、その点は認識しておいたほうが良いと思います。
副業については、政府も推進していますし、厚生労働省のモデル就業規則でも変更されましたので、徐々に認識は変わっていくとは思いますね。